フェンダー社が当時、もっともグレードの高いギターとして販売したジャズマスターは、当初の普及範囲とは違って別な形で受け入れられました。類似するジャガーとの違いも含めたフェンダーのエレキギター、ジャズマスターを徹底分析します。

ジャズマスター(ギターの種類)音の魅力とジャガーとの違い調査!

目次

  1. ジャンルへの対応性から誕生したジャズマスター
  2. 王道だったストラトキャスターと双璧をなす目的だった
  3. ジャズメンにモテるエレキギターという触れ込み
  4. ジャズマスターの歩み
  5. ジャズマスターの特徴的イクイップメント
  6. ジャズマスターのコンセプトのすれ違いと行方
  7. ジャズマスターが奏でる音質について
  8. 何といってもジャズマスターはこのルックス!
  9. 繊細さとワイルドさがモテるギターの秘訣
  10. ジャズマスターをメインギターとして愛用する人物
  11. ジャズマスターとジャガーの違いについて
  12. ジャガーとはどんな種類のギター?
  13. ジャズマスターとジャガーの具体的な違い
  14. ジャズマスターとジャガーの違いを一言でいえば?
  15. ジャズマスターについての総評

ジャンルへの対応性から誕生したジャズマスター

フェンダー社はアメリカのギターメーカーです。常にライバルとも言えるギブソン社とはしのぎを削る間柄です。数々の名ギターを生産した老舗中の老舗であるフェンダー社が1958年にある一本のエレキギターを誕生させました。それが「ジャズマスター」です。ジャズという名前が付いたエレクトリックギターのジャズマスターについて、その経緯や詳細をまとめていきます。

王道だったストラトキャスターと双璧をなす目的だった

フェンダー社がジャズマスターを開発し売りだしたのは1958年のことです。同社は既に発売されていたストラトキャスターとテレキャスターよりもグレードの高いモデルを作るコンセプトを打ち出し誕生させました。ジャズマスターはフェンダー社が総力を決して挑んだ機種なのでした。

ジャズメンにモテるエレキギターという触れ込み

ジャズマスターはその名が示すように、ジャズミュージシャンをターゲットにして発表された当時のフェンダー社による最高機種でした。このエレクトリックギターの特徴的な点は、材質の種類として初めてローズウッドのフィンガーボードを採用したことにあります。今ではストラトキャスターなどでも定番となったローズ指版は、ジャズマスターが最初だったのです。

ジャズマスターの歩み

ギブソン社との競合争いのネタとして

ジャズマスターの誕生と歴史は意外と古く、1958年にジャズの世界で使用してもらう種類の専用エレクトリックギターとして開発されたものです。ライバルのギブソン社からはES-335、フライングV、エクスプローラーといった今でも名機とされる機種がデビューしています。フェンダー社としても同様に、ハイグレードで他とは一味違いがあるエレキギター開発が命題となりました。

ジャズよりもロックの世界でモテるギターになる

ジャズマスターは1966年にイナーチェンジもされました。ポジションマークはブロックインレイに変更、ネックバインディングが入り、さらなるグレードアップを図ったジャズマスターが登場しました。その頃になると、ジャズ専用のギターというより、なぜかロック系にモテるシェイプと音が鳴るギターということで評判となりました。

いったん下火になったジャズマスターに再び火が着く

⑲80年代に入る頃、音楽界はへヴょ・メタルやハードロックがポピュラーになり、ジャガー及びジャズマスターのような形状の種類は不人気となってしまいます。この時期、ジャズマスターはやむなく生産中止になりました。しかし根強いファンの声も多く1986年、フェンダー・ジャパン社が復刻モデルを発売、1999年にはフェンダー・USA社も復刻モデルを作りました。

ジャズマスターの特徴的イクイップメント

ローズウッドのフィンガーボード

何といってもジャズマスターの最大の特徴はローズ指版の採用です。それまでのギターになかった材質を革新的に使ったことはギターの歴史の中でも屈指な出来事です。以降、ローズウッドの指版は一般的になりました。見た目の良さと運指の滑らかさがローズウッドの魅力です。

オフセット・ウエスト

ジャズマスターのボディの形状は「オフセット・ウェスト」と呼ばれるシェイプをしています。これは言わば左右非対称な形を示します。ロックやその他の種類のポップスと違い、ジャズマスターは「ジャズ」を演奏するプレーヤー向けに製作されたギターです。その為、通常椅子に座って演奏する機会が多いジャズ・ギタリストのパフォーマンスの向上を考慮したものとされています。

ワイルドコイルピックアップ

フェンダー社のエレクトリックギターの多くは、シングルコイル系のマイク(ピックアップ)を装着しています。これによってクリアで繊細な音を演出する特徴があります。ジャズマスターの場合、従来のシングルコイルよりもやや太くて甘い音が出る「ワイルドコイルピックアップ」を搭載することで、他との差別化を図りました。

プリセット回路搭載

ジャズマスターには他のエレキギターと違い、フロントピックアップ用のプリセット回路が付いています。スイッチの上下で回路が切り替わります。この装置によって更に甘く太いサウンド設定が出来て、トーンとボリュームとの調整で幅広い音が作れます。サウンドのバリエーションが広がって使い勝手が良いという印象です。

フローティング・トレモロ

フェンダー社のジャガーやジャズマスターには「フローティング・トレモロ」というアーム・システムが付いています。アームによる甘いヴィブラーとができます。また、弦が切れた場合には「トレムロック・ボタン」によってトレモロを固定することができるため、チューニングが狂ったり演奏の不安定さをカバーできます。チューニングに関しては上手に調整する必要があります。

ジャズマスターのコンセプトのすれ違いと行方

最初はジャズシーンへ投入したいギター

ストラトキャスター、テレキャスターなどのフェンダー社のギターは、ポップスやロック系のミュージシャン達にはモテる機種でした。しかし1950年代のジャズの世界ではシングルコイル系の鋭角なサウンドが受け入れられず、ギブソン社の機種がモテる時代でした。ジャズシーンへのシェア拡大の為には、メロウなトーンを出せるギター開発が必要となりました。

評価はイマイチだったはずが

ジャズマスターが1958年に登場しジョー・パスなどのジャズ系アーティストの一部で使用されました。しかし保守的分野でもあるジャズ系の人々にはあまり受けが良くなかったのです。既に定着していたギブソンのフルアコースティックなギター等の存在で牙城が崩れなかったわけです。ジャズマスターの需要は一旦ジャズの世界からは退却しますが、思わぬ方向性が芽生え始めました。

ジャズマスターがモテるロケーション

フェンダーの本社はカリフォルニアの南部にありました。一方、⑲60年代初頭のカリフォルニアのカルチャーでは、サーフィンを中心にホットロッドやガレージ系サウンドが流行しはじめました。その背景を垣間見つつジャズマスターとジャガーの開発案は、社長のレオ・フェンダー自らが現地ミュージシャンより意見をリサーチしていました。

60年代の流行とマッチしたジャズマスターのサウンド

やがてジャズマスターはサーフ系音楽とのマッチングがウケる機種として注目され始めたのです。独自のピックアップから出力される音の太さやパワーがロック系と相性が良かったことで、以降ジャズマスター周辺の同種類なギターのほとんどは、ガレージロックやサーフロックのミュージシャンにモテるという図式が出来上がりました。

ジャズマスターが奏でる音質について

音の粒ぞろいがいいギター

ジャズマスターはボディが大きめなので、弦の振動をしっかり受け止めることができます。一弦ずつ弾いた場合もその一音づつがクリアに分散されます。音の粒がよく揃うギターと言えるでしょう。アンプに増幅しないで空弾きするだけでも、意外と音量が大きく聞こえます。

リズムギターとして他より違いがでる

ジャズマスターはサスティーンがあまり長くないので音の消滅が速いという欠点があります。しかしそれは逆にリズムの歯切れが良くなるという長所でもあり、リズムカッティングの際は心地よい音作りが期待できます。ザクザクとした切れるサウンドを要求するタイプの方には、おすすめなエレクトリックギターです。

フロントとリアのピックアップの違い

大型のワイルドコイルピックアップが放つ太く甘い音が独特ですが、澄んだクリアな音もミックスできるのがジャズマスターならではです。フロントピックアップはジャズに対応するメロウなトーンで、リアピックアップはロック風なエッジの利いた音の違いが演出できます。

クランチやクリアな音作りも簡単

近年ではギターの音のバリエーションが問われています。クリーンな音や歪むギリギリなクランチな音を、ボリュームやスィッチ切り替えで安易にできる演奏性の優れたギターが好まれます。

フィードバックなどの特異なサウンドメイキングも可能

ジャズマスターはそんなサウンドバリエーションの豊富さが要求される場所で活躍します。また歪みが強い時のノイズ発生やハウリングといったフィードバックも起こせるので、そんな相乗効果を期待することもできます。

何といってもジャズマスターはこのルックス!

そしてジャズマスター最大の魅力は、この独特なルックスにあると言えます。ステージ映えする形状がロック系の中でも定着しています。

繊細さとワイルドさがモテるギターの秘訣

元々はジャズのような音の極みを求めるジャンルに対応すべく開発された種類のギターだけあり、繊細さとワイルドな音を同時に兼ね備えていることも含め、今や多くのフォロワーが存在します。誕生から半世紀を経て、熱く受け入れられているモテるギターの一つと言えるでしょう。

ジャズマスターをメインギターとして愛用する人物

ジャズの専用ギターとして開発したものの、そのルックスと音の違いからジャズに嫌煙された機種のジャズマスター、しかし甘さと金属的でワイルドな音の中間的な独自性がロックの世界ではモテる要素となりました。ここでは、主にジャズマスターを使用するミュージシャンをご紹介いたします。

J・マスシス

数少ない90年代グランジロックの生き残りダイナソーJr.、その中心人物であるギターのJ・マスシスこそジャズマスター使いの一人者かもしれません。バンド編成が極めてシンプルなので音はかなり野蛮に歪ませる特徴があります。パワーコードー中心に時折ソロも弾くというオーソドックスなスタイルです。ところがそんな王道が意外と彼の持ち味となり今でも支持されています。

サーストン・ムーア

同じくグランジ世代のグループである「ソニック・ユース」のサーストン・ムーアもジャズマスター愛好家で知られています。ノイジーなサウンドとアバンギャルドさが彼の持ち味です。世に種類あるギターの中からメインギターとして選んだのは、たまたま購入時に安かったからだという些細な理由からだそうです。しかしゆくゆくそれが彼のトレードマークにもなりました。

ケヴィン・シールズ

ジャズマスターの愛好家の中でも、マイ・ブラディ・バレンタインの化ヴィン・シールズほど、可能性を追求しているギタリストは稀かもしれません。シューゲイザーというジャンルを確立させた彼らの音の秘密は、ケヴィンが作り上げる音の洪水です。無数な種類のエフェクターと駆使し残響音のようなギタースタイルが特徴的です。

ジョー・パス

本来はギブソンES-175を愛用するジョー・パスは、一時期にジャズマスターを使用していました。ジャズギターの世界で実際にジャズマスターを使って違いを見せていた、そんな彼のプレイスタイルは独創性があると今なお語られ続けています。

田渕ひさ子

邦楽の世界でジャズマスターを連想させる人物として元ナンバーガールズ(現bloodthirsty butchers)の田渕ひさ子が挙がります。一見おしとやかな女性と思いきや、常に野蛮な音を展開する彼女を支持する人が世に多いと聞きます。この動画では類似種類のギターであるジャガートの弾き比べをしています。

ジャズマスターとジャガーの違いについて

ここではジャズマスターと類似した機種である「ジャガー」との比較検討をします。実は種類としては同じようでいて微妙に違いがあるのです。ちょっと見ただけでは混同しやすい二つの機種の特徴に迫ります。

ジャガーとはどんな種類のギター?

ジャガーの誕生は、ジャズマスター発売から4年経った1962年です。フェンダー社では次世代型のエレクトリックギターの開発を命題としていた時期です。社長のレオ・フェンダー氏自身も地元カリフォルニア周辺を回り、どのようなギターが求められているのかを研究しました。そして当時流行り始めたサーフ系ミュージックをターゲットに作り上げた最高機種なのです。

ジャズマスターとジャガーの具体的な違い

ジャズマスターよりも短いショートスケール

ジャガーの場合、ジャズマスターよりもネックが短くショートスケールネックを採用しています。ジャズマスターはストラトキャスターと同様な約648mm・21フレットですが、ジャガーは約610mm・22フレットです。なので比較的に手が小さい女性や小柄な方々にも取り扱いしやすさがポイントです。

よりサウンドバリエーションが広いスィッチ搭載

ジャガーにはピックアップセレクターとしてスライドスイッチが採用されています。更にはローカット用スイッチも付いているため、よりトーンセレクトが増えています。サウンドバリエーションが豊富になったところが、ジャズマスターとの違いの一つです。

ボディも音もスリムで鋭角

ジャガーは60年代のサーフロックブームの到来に合わせて「モテる」ギターというコンセプトで作られたと言えます。よってボディもジャズマスターより薄めでシャープに仕上がり、ピックアップも特製のシングルコイルで激しく鳴るパワーのあるものをチョイスしています。

ジャズマスターとジャガーの違いを一言でいえば?

以上を含めまだまだ特徴的なジャガーとジャズマスターの違いはありますが、簡単に締めくくると「丸みのある甘い感じのジャズマスター」「シャープで鋭角的なサウンドのジャガー」という捉え方をすればよいでしょう。モテるエレキギターという意味では、近年どちらも女性が好んで使用している傾向が強いようです。形状の面白さと弾きやすさがウケているようです。

ジャズマスターについての総評

50年代末に誕生したジャズマスターも半世紀を経て、最近注目を浴びつつあるようです。王道なストラトキャスターやレスポールのような定位置に落ち着くか否かはわかりませんが、独特なサウンドと個性的なシェイプは、あらゆる音楽ジャンルにぴったりハマるようです。モテるギターの一つとして今後もチェックしていきたいものです。


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