黒いスーツなら礼服だと思っていませんか?実は普段使いのスーツと礼服は違いがあるんです。冠婚葬祭に使える礼服と普段使いのスーツの見分け方、その違いについてまとめました。あわせて慶事と弔辞の礼服の違い、礼服の基本知識についてもまとめています。

目次
- 礼服ってそもそもどんな種類がある?違いは?
- 使う機会がなく廃れていく正礼服と準礼服
- 一着あれば大丈夫!の礼服とスーツの謎
- 一番の違い!ブラックスーツと礼服の色の差
- 礼服とスーツの素材の違いはなぜ?
- スーツのジャケットの襟にステッチの違いがある!
- シングル?ダブル?礼服とスーツで違いはある?
- ボタンの数の違いは?礼服なら一つボタンが一番正式!
- スーツと礼服の違いはベントで分かる!
- 袖ボタンの数にスーツと礼服では違いがある?
- パンツの裾はシングル?ダブル?スーツとの違いはあるの?
- 結婚式OK!葬式NGなスーツと礼服の違いは?
- 冠婚葬祭を1着のブラックスーツでこなすための礼服は?
- 礼服コーナーに礼服らしくないスーツがあるのはなぜ?
- 移り変わっていく常識と礼服とスーツ
礼服ってそもそもどんな種類がある?違いは?
そもそも礼服と一口に言っても、どんな種類があるのでしょうか?日本の一般的な礼服のイメージと、海外における礼服では、実は少し違いがあります。日本でも本来の礼服の基準は海外に沿っているのですが、近年では気にしない人も多く、常識が変わってきています。まずは海外における礼服の一般の区分をチェックしておきましょう。
正礼服はモーニングコートと燕尾服
一番品位の高い礼服は、モーニングコートと燕尾服です。モーニングコートはストライプのスラックスに白黒ストライプネクタイをつけるのが特徴の礼服で、通常朝~午後6時までのみ着用する礼服です。ただし、冠婚葬祭の中でも弔辞の際には黒無地のスラックスとネクタイになります。
また、燕尾服はその名の通りジャケットの裾が燕の尾型の礼服です。こちらはモーニングコートと逆に、午後6時以降の夜に着用されることから、イブニングコートとも呼びます。ネクタイが白いことから、ホワイトタイと呼ぶこともあります。
準礼服はディレクターズスーツとタキシード
正礼服よりもややカジュアルになるのが、準礼服のディレクターずスーツと、タキシードです。ディレクターズスーツは昼間に着用し、スラックスがコールパンツと呼ばれる灰色のストライプの物を着用するのが特徴です。タキシードは夜に着用する準礼服で、黒の蝶ネクタイをつけるところから、ブラックタイとも言われます。
招待状などのドレスコードにホワイトタイと書かれていれば燕尾服、ブラックタイであればタキシードを着用するべきと分かる訳ですね。ちなみに、どちらも夜の装いなので、集まりが夜であることも分かります。
略礼装が一般的に日本で言う礼服
略礼服は準礼服より更にカジュアルダウンした装いで、一般的に日本で言う礼服や黒や紺などの深い色合いのダークスーツを指します。ダークスーツと言っても、単純に色の濃いスーツというだけでなく、パンツやジャケットにはそれぞれ礼服らしい特徴があります。どんな特徴があり、見分け方があるのかは後述します。
使う機会がなく廃れていく正礼服と準礼服
ところで普段礼服と言っても、スーツなどを扱う服飾店で、タキシードや燕尾服を目にする機会はあるでしょうか?あまり見た覚えがない方が多いのではないでしょうか。タキシードやモーニングコート、燕尾服と言えば、結婚式や内閣発足式のようなシーンしか思い浮かばない方がほとんどでしょう。
礼服の昼と夜の違いの区別がなくなってきている?
燕尾服はひと昔前は、結婚式では必ず身に着けるというくらい一般的なイメージでしたが、近年では燕尾服を見かけることも少なくなってきています。本来であれば、夜の結婚式であれば、最上級の男性の礼装は燕尾服がふさわしいのですが、昼と夜に関わらず、モーニングコートを着用する方も増えているようです。
逆に昼間の結婚式でもタキシードを着用したり、そもそもディレクターズスーツや燕尾服など、正礼服・準礼服の区別なく衣装選びをするシーンも増えてきています。これは、礼服の品位の区別や昼夜の着用の区別が徐々に失われつつあるからです。
結婚式の主賓・主役以外は略礼服で十分?
本来であればその場その場にふさわしい装いを選んで、礼服を着用すべきですが、現在は一般的な付き合いの中では、結婚式の主賓と主役以外では略礼服を持っていれば十分という風潮になりつつあります。また、もし正礼服や準礼服が必要になるシーンがあっても、滅多にないためレンタル衣装で間に合ってしまう世の中のため、正礼服・準礼服は廃れていく一方です。
一着あれば大丈夫!の礼服とスーツの謎
着物メンズが流行ったりもしていますが、日本は古来は着物文化でした。それが洋服文化が主流になったのは、昭和に入ってからのことです。まだスーツを持っているのが当たり前ではなかった昭和30年ごろに、洋服文化の推奨を受けて、服飾店ではこぞってスーツを売り出す流れが出てきました。そこに現れたのが、今当たり前になっているいわゆる礼服です。
一着買うだけでも高い洋服を、冠婚葬祭に一着あれば使える!という触れ込みで売り出すことにより、爆発的に売れた結果が、現在も残っている日本の略礼服なのです。
海外と日本の礼服との違い
日本はもともと着物文化であり、着物の礼服は黒羽二重の紋付でした。そこへ洋服文化が入ってきたため、礼服という形でスーツを取り入れたものの、定着したのは冠婚葬祭をネクタイの交換だけで一着で乗り切る一着の略礼服です。海外との決定的な違いは、弔辞にも慶事にも同じブラックスーツを着用するということです。
海外では、慶事の際に全身をブラックスーツで固めるということはありえないので、全身黒一色の略礼服が冠婚葬祭で利用できるのは、日本だけであると覚えておいた方がいいでしょう。これ以下では、日本における一般的な礼服と、ブラックスーツとの違いについてチェックしていきます。
一番の違い!ブラックスーツと礼服の色の差
そろそろ礼服とブラックスーツとの違いが気になって焦れてくるメンズもいる頃でしょう。礼服とスーツとの見分け方で一番重要になるのは、実は色合いです。パっと見では、ブラックスーツも礼服も同じ黒ですが、黒の深さが違います。
通常のカジュアルスーツ、ビジネススーツなどは、日の光に当てたり強い照明の元にあると薄くグレーがかって見えたり、紺がかって見えたりと、黒が薄くなって見えます。逆にきちんとした礼服は、強い光に当たろうが日の光にさらされようが、深い黒色で色あせて見えることがありません。ここが決定的な違いなのです。
黒の違いで恥をかく!?お葬式に注意
冠婚葬祭の中でも、急遽礼服が必要になってしまう弔辞。急ぎで礼服が用意できなかったからと、ブラックスーツで葬式に参加してしまうメンズは少なくありません。でも、そのブラックスーツはすぐに礼服ではないと見抜かれてしまいます。多くの場合、出棺が終わったあとなど、葬儀場から外に出た時に日の光を受けて、黒が褪せて見える場面で礼服ではないことがバレてしまいます。
特に礼服の集団の中にあって、ブラックスーツを着ていれば一目瞭然なので、指摘されずとも後ろ指さされることは間違いないでしょう。大人メンズならビシっと真っ黒の礼服を着用して、笑い物にならないようにしたいですね。冠婚葬祭の中でも特に葬式では礼服でないと、親族から非難の目を向けられることが多いので注意が必要です。
礼服とスーツの素材の違いはなぜ?
礼服とスーツの見分け方の二つ目は、使用されている素材の違いです。実は質の良い礼服ではウール100%のものが多いです。これには、礼服をより黒く見せることと関連があります。
ウールとの違い!化学繊維は黒く染めにくい
安い服によく利用されるポリエステルなどの化学繊維は、黒く染めても蛍光色が強いなどの原因で、深い黒色に染め上げることが困難です。それに比べてウールの素材は繰り返しの染色によって、より深い黒色を出すことができます。このため、礼服の素材はウール100%の物が多いのです。
近年は混合ウールの製品も多数ある
以前は高級でしっかりとした礼服と言えば、ウール100%が当たり前でしたが、近年ではポリエステルと混合の素材の商品も増えてきています。これは、染色技術の革新や、ウールだけでは低くなる耐久度を丈夫なポリエステルと混ぜることによって、耐久度を上げる狙いなどがあります。
ウール100%が一番望ましい礼服の素材ではありますが、ポリエステルが配合されていれば即礼服ではないということではないので、一番は黒の濃さの違いを見て選ぶと良いでしょう。
スーツのジャケットの襟にステッチの違いがある!
スーツのジャケットの襟(ラペル)でも、礼服とスーツの違いを確認することができます。縫い目の糸が見えるように縫ってあるのをステッチといいますが、スーツの中にはラペルにステッチをつけてあるものもあります。
ステッチがある襟はカジュアルダウン
ステッチは通常、飾り縫いと同じなので、ステッチがあるものはカジュアルダウンしてしまいます。このため、ラペルにステッチがあるものは、礼服とは言い難いです。礼服コーナーで販売しているものの中には、ステッチがされているものもありますが、ステッチを見せて手縫い風にすることで高級感を出しているだけのもののため、礼服としては不適切です。
礼服のコーナーで売っているものであっても、ラペルにステッチがないものを選ぶのが、できる大人メンズです。近くに寄らないと分からないような細かいところですが、きちんとステッチの有無の違いを見極めましょう。
シングル?ダブル?礼服とスーツで違いはある?
ボタンは一列のシングルと、二列のダブルがありますね。ボタンの列の数では見分け方はあるのでしょうか。答えから言うと、シングルもダブルも礼服とスーツの間に区別はありません。
略礼服に関して、シングルボタンやダブルボタンの決まりは特になく、好みで選んで問題ありません。ただし、ダブルの礼服はひと昔前の流行りのため、選ぶデザインによっては流行遅れと思われることもあります。近年では老若関わらず、シングルボタンを選ぶ傾向が高いようです。シングルかダブルかでは、礼服との見分け方にはならないということもポイントです。
ボタンの数の違いは?礼服なら一つボタンが一番正式!
スーツの売り場を見渡すと、三つボタンや二つボタンの礼服が並んでいる事がありますが、ボタンの数でスーツとの違いを知る見分け方はあるでしょうか?ヒントは、ボタンの数は少なければ少ないほど、フォーマル度が上がることです。
一つボタンの拝みボタンが一番フォーマル度が高い
下の写真のように、ジャケットが手を拝むように合わせてつけるボタンを拝みボタンといいます。この拝みボタンが一つついているのが、一番フォーマル度が高い装いです。
ただし、この一つボタンは、タキシードや燕尾服などの正礼服、準礼服に用いられることが多い為、略礼服となる日本の礼服では、ほとんど一つボタンの物はありません。このため、一般的なスーツと同じ、二つボタンの礼服が一般的であり、スーツと礼服の違いを知る見分け方は、ボタンの点ではありません。
スーツと礼服の違いはベントで分かる!
売り場では黒の深さまでチェックしづらい、もっと分かりやすい違いはないのかとお思いのメンズへ、簡単な見分け方がもう一つあります。それが、ジャケットのベントです。
センターベント・サイドベンツはともに礼服ではない!
ベントとは、ジャケットの後ろの裾にある割れ目のことを言います。元々は乗馬の際にジャケットがヨレないためや、帯剣した際にジャケットが邪魔にならないようにつけられた割れ目だと言われています。後ろの真ん中にのみあるものをセンターベント、サイド二か所にあるものをサイドベンツといいます。これらのベントは共に、帯剣する際や乗馬の際に必要なものなので、パーティーなどの礼装がふさわしい場面では通常不要なものです。
必然的にベントがないもの、ノーベントのジャケットは礼服です。つまり、礼服とスーツの見分け方として、ベントがあるかないかの違いで見分けることができるのです。色の見分け方に自信のないメンズも、ジャケットの裏をめくってベントの有無の違いで礼服かどうかを見極めましょう。
袖ボタンの数にスーツと礼服では違いがある?
見落としがちなのが、袖ボタンの数の違いです。礼服とスーツでは、あまり違いがないと考えられがちですが、ここも見分け方のポイントの一つです。
袖ボタンは多い方がフォーマル度が高い
近年のビジネススーツは、袖ボタンの数が4個のタイプも多くなってきましたが、カジュアル度の高いスーツでは袖ボタンが2個のタイプもあります。実は袖ボタンは数が多い方がフォーマル度が高く、礼服であれば3~5個ついているのが正常です。スーツと礼服の見分け方では、袖ボタンが2個以下であれば礼服ではないと判断できます。
パンツの裾はシングル?ダブル?スーツとの違いはあるの?
パンツの裾は、折り返しのないシングルと、折り返しのあるダブルがあります。ここにも礼服とスーツとの違いの見分け方があります。結論から言えば、礼服ではシングルの裾しかありません。
ダブルの裾はカジュアルダウン
パンツの裾のダブルが誕生した由来には諸説ありますが、泥除けをするためや狩猟の邪魔だったなど、運動をする場面で産まれた物だと推測されています。運動をしないような礼装が必要となる場面では、裾をまくりあげる必要がありませんから、ダブルの裾はカジュアルダウンということになり、礼服のパンツはシングルの裾が基本なのです。
結婚式OK!葬式NGなスーツと礼服の違いは?
礼服コーナーで販売している礼服の中でも、冠婚葬祭のうち結婚式には向いていても葬式などの弔辞には不向きなものがあります。その大きな違いは、光沢です。
弔辞では、毛皮や光沢のあるものは不謹慎とされますが、礼服も同様に黒色であっても光沢のあるものはふさわしくないとされています。冠婚葬祭の中でも、慶事であれば光沢のある黒色の礼服は問題ありませんが、こと葬式などの弔辞では、光を反射しない落ち着いた黒色が必要です
購入の際の見極めは、販売員に確認しても大丈夫ですが、照明にかざした際に光沢でできるツヤの輪ができないかどうかでも判断できます。できるメンズなら、販売員に聞かなくても気づきたいところです。
冠婚葬祭を1着のブラックスーツでこなすための礼服は?
日本のメンズの略礼服の良いところは、一着あれば小物の交換で冠婚葬祭を乗り切れるということです。では、冠婚葬祭をこなすことのできるブラックスーツの条件とは何でしょうか。礼服とスーツの違いも含めて確認してみましょう。
生地が平織など光沢がないもの
慶事であれば光沢のある生地でも問題ありませんが、弔辞にも使える礼服となると、第一に生地に光沢がないことが必須条件になります。基本的にビジネススーツなどは、光沢がある織り方をしてあるため、ここにもスーツと礼服の違いがでます。
礼服で光沢のない織り方と言えば、平織の物が多いです。反対に朱子織の生地は滑らかですが、光沢があるので避けましょう。
無地の礼服を選ぶ
メンズの礼服にはレディースの礼服のように柄の入ったスーツは販売されていませんが、黒の刺繍などの模様など柄の入った礼服も避けます。メンズの礼服に限っては、全くの無地の礼服を選ぶようにします。
礼服コーナーに礼服らしくないスーツがあるのはなぜ?
ここまで礼服とスーツの違いを確認してきたメンズの中には、あることに疑問を抱く方もいるでしょう。そのあることとは、礼服の売り場に解説してきた礼服とスーツの違いに反する礼服が販売されていることです。
日本の礼服は略礼服である
礼服の条件として、黒色が深くて濃いこと、ボタンの数が少ないこと、パンツの裾がシングルであることなどが挙げられます。しかし、これらの条件はフォーマル度が高いことに準じています。略礼服は正礼服や準礼服に比べると、かなりカジュアルダウンした装いのため、ボタンの数が多かったりするようなカジュアルダウンが存在しえます。
つまり、フォーマル度の低いボタン3個の礼服が礼服売り場に売っていても「略礼服」としては間違いではないのです。こういった観点から、ラペルにステッチがある礼服や、袖ボタンの数が少ない礼服が、礼服売り場に販売されていることもありえます。
移り変わっていく常識と礼服とスーツ
販売しているものが間違っているわけでも、今回の解説が間違っている訳でもないのです。大人メンズは黙って、カジュアルダウンした略礼服よりも、フォーマル度が高めの二つボタン、ステッチなしの礼服を選びましょう。
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